欧州債務危機で単一通貨ユーロ圏の国債格下げが相次ぐ中、
2008年の世界金融危機で金融システムが完全に崩壊した人口32万の島国アイスランドの格付けが「投資適格」に引き上げられるなど回復が顕著になってきた。

民間銀行の海外債務を政府が肩代わりせずに大半を踏み倒し、金融危機ではアキレス腱(けん)になった小さな通貨アイスランド・クローナが切り下げられ、輸出ドライブがかかったためだ。

17日、欧州系格付け会社フィッチ・レーティングスは同国の外貨建て国債の長期信用格付けを投資不適格の「ダブルBプラス」から投資適格の「トリプルBマイナス」に1段階引き上げた。
昨年8月に国際通貨基金(IMF)の支援プログラムも終了、「金融・通貨危機以来、同国は構造改革を進め、信用回復に努めてきた」と評価され、「投資不適格」のギリシャとは大きな違いを見せた。

政府債務は昨年、国内総生産(GDP)の100%に達したが、基礎的財政収支は今年黒字化すると予想されるなどトンネルは脱した。
昨年の経済成長率は2.9%、今年も2.4%成長が期待され、来年には経常収支赤字が解消される。

08年9月のリーマン・ショックを受け、翌10月、アイスランドの国内大手3行は国有化され、
負債総額はGDPの約10倍の約14兆4370億アイスランドクローナ(現在の為替相場で約9兆2470億円)にのぼった。
同国政府は3行の国内資産を新しい銀行に移し替え、海外投資家が保有する銀行債券の大半を返済しなかった。

アイスランド大のアグナルソン経済研究所長は「返済するには大きすぎる。一方、踏み倒しても金融危機を再発させるほど大きくなかった」と解説する。

ネット銀行の預金払い戻しをめぐって英国やオランダとの論争が続くが、この大なたで銀行の負債総額はGDPの約2倍に縮小した。

しかも、アイスランド・クローナが対ユーロでピーク時から最大約6割も切り下げられたため、輸出が息を吹き返した。

同国は欧州連合(EU)と加盟交渉を進めているが、アグナルソン所長は
「ユーロという大きな傘に入っていれば金融危機に直撃されなかったが、今のようなV字回復は見込めなかった。今では自国漁業・農業や主権の保護、EU不信からEU加盟への賛否は分かれている」
と語る。